武家故実家 伊勢貞丈

包結図説 伊勢貞丈著

伊勢いせ貞丈さだたけ

1717(享保2年)-1784(天明4年) 68歳没  故実家(儀式や法令などのしきたりに通じた学者)
八代将軍徳川吉宗治世下の享保2年12月28日、江戸の麻布鷺森に生まれる。通称は平蔵、号は安斎という。10歳で家督をつぐ。勉強好きで努力型の学者。同時代人に本居宣長・平賀源内・青木昆陽がある。
室町幕府政所執事の家柄。将軍から大父(おおじ)と呼ばれるほどの大家で代々武家の礼法故実に詳しく、貞丈も江戸幕府の旗本として諸儀式にあたる。

包結図説ほうけつずせつ

明和元年(1764年)に自らの家に伝わっていた包みの作法を「包之記」にまとめ、のちに贈進にまつわるさまざまな結び方を示した「結之記」と一体になって「包結図説」と呼ばれる。日本で最初の包み結びの専門書。これにより、折形おりがたが制度として確立されたのはおよそ650年前、室町時代初期であるということがようやく明らかになる。結びに関しては武家の心得としての結びに特徴があり、鷹の結び様3種や第一の婚礼道具と言われる貝桶の結び、また装束の結びなどを丁寧に載せていることは興味深い。
(国立国会図書館デジタルコレクション)

貞丈雑記ていじょうざっき(ワイド版東洋文庫444 平凡社 「貞丈雑記1~4」 島田勇雄 校注)

宝暦13年(1763)より没年までの20年間に筆録。16巻に及ぶ大作で、官職、装束、飲食、調度、武具などの36もの部類の下に2350の項目が収載されており、研究の集大成といえる。「諸結びの部」では「さまざまの緒のむすびようは『包結記』に絵図をしるし置くなり」とある。「あおい結びを『あわち結び』という人あり。あやまりなり。」「鬼むすびと云う事、古伝になし。」などことわりを大事にした貞丈らしい説明で、「調度の部」「鷹類の部」「装束の部」などに結びの記述がみられる。