1. 結びの研究者 額田巌氏の本
プロフィール
額田巌:1911年(明治44年)-1993年(平成5年)岡山に生まれる。1935年早稲田大学理工学部卒業。
日本電気株式会社に入社。工学博士・文学博士。 1940年(昭和15年)から本格的に結びの研究を始める。結びに関する本以外では『決断する人のための経営科学入門』・『知識産業と電子・通信』・『垣根』・『菊と桐:高貴なる紋章の世界』がある。
包み結びの歳時記(福武書店 / 1991年発行 )
1991年、亡くなる2年前に発行された本。
「はしがき」に「ここでは民俗学の視点に立って、農耕の産物としての藁を基盤にした包み、結びが年中行事の中にどのような形で組み込まれてきたかを明らかにし、これを『包み結びの歳時記』と呼ぶことにした。さらにこの歳時記の中に、有名な俳句と古い時代のイラストを織り込みながら、楽しい読み物にするように試みたつもありである。」とあります。
私が結びを始めて最初に買った結びの本。古いイラストと俳句が楽しいとても良いみやすい本です。
小正月の綱引きのこと、背守りのお話、相撲に和菓子にお節供に。身近にありながら行事としては忘れられているものが多く記載されています。
この時すでに結びの研究を始めて55年という歳月が流れています。額田氏は日本文化の根源をなすものとして結びを研究されましたが、その最後に生活に根付いた包み結びを歳時記として残されました。この後に「菊と桐」を書きますが出版を目前にして急逝します。
「日本の結び」(講談社)
この本は当初手に入らず図書館で借りてコピーを保存しましたが、その後古書で手に入りました。
本の裏に「昭和52年12月30日帯広にて求む 昌之よりのはじめての小使にて買求む 子供の成長を喜ぶ 記念之書」と手書きで書かれており、記念の書がこの「日本の結び」であったのだなあ、と感慨深いものがありました。表紙は美しい訶梨勒、裏には薬玉の絵が描かれています。私の薬玉の作品はこの絵を参考にして結びで再現したものです。
内容は大きく「結びの文化」「結びの伝統」「結びの現代」に分かれています。縄文から弥生については貴重な画像写真が載っており、縄や結縄が測量に利用されたことなど、紐と結びの原初的な働きについて考えるきっかけとなりました。「結びの現代」では結びに関するイラストもたくさん掲載されています。
「結び目の謎」(中公新書)
はしがきに「一見小さな『結び』のもつ大きなひろがりを、みんなに知っていただきたいと願って筆をとった次第である。」とあるように、戦前から戦後にかけて考古学者山内静男、風俗研究者江馬務、日本常民文化研究所長渋沢敬三、海洋民族学西村朝日太郎、柳田国男から紹介された歴史学者和歌森太郎など、様々な分野の専門家と知り合い結びの研究につなげていく様子はまさに「結びのもつ大きな広がり」を感じさせてくれます。「結びの文化史」の入り口としても良い本だと思います。
法政大学出版局の刊行物
結び(1972年発行)
「糸、ひも、なわ、ロープなどを用いた結び方を民族、時代、故実、職業などの面からとらえて文化史について述べたのがこの主題である。」とはしがきにあります。
第一部:歴史的なとらえ方
第二部:機能的なとらえ方
第三部:社会的・民俗的なとらえ方
第四部:「結び」の理論 と、この本では結びの意義についてわかりやすく分けています。
第4章では結びの真の理解には数学的解釈が必要だと、結びの問題を閉曲線の問題ととらえ結びの表示法の沿革などにも触れています。早稲田大学工学部を出て日本電気KKに入社し「電気回線の電線のつなぎ方」の研究がきっかけで結びの世界に導かれた著者は最後の章を数学的な研究成果で締めくくっています。工学博士であり文学博士でもある額田巌氏の研究対象の広さを実感できる一冊です。
包み(1977年発行)
垣根(1984年発行)
ひも(1986年発行)
東洋経済新報社の刊行物
日本人の知恵と心「結びの文化」(1983年発行)
今に生きる技と発送「包みの文化」(1985年発行)
2.結びの解説書 藤原覚一氏の本
プロフィール
藤原覚一:1895年広島に生まれる。1921年東京美術学校西洋画科卒業。1922年旧制中学校教員。
1949年三原市図書館館長。著書「図説 日本の結び」「結び方手帖」
図説日本の結び(築地書館 / 1974年発行)
著者自らによる結び方の図629と技法解説、及び結びに関する論考も収載した300頁に及ぶ大著。
第一章 人間と結びとの関係
第二章 結びの機能を探る
第三章 結び方の技法1 作業結び
第四章 結び方の技法2 装飾結び
第五章 結びの本質は何か
結び方手帖(築地書館 /1975年発行)
〈まえがきより〉
さきに「図説日本の結び」を出して世に問いましたところ、内容があまりに広範にわたり個展の結びなど現在用いられていないものまで収容された大冊となり、その上高価なので一般医入手困難になりました。そんな時この度幸に同じ出版社のご厚意により手軽で実際的なものをとのことでこの小縮冊「結び方手帖」を出版することになりました。1975年6月2日欧州へ旅立つ日 著者識す
「図説日本の結び』の小型版で100頁ほど。
内容的にはかなり絞ってはいますが図は231番まであり充実しています。
結びに関する詳しい論考は掲載されていません。